戦争の犠牲となって親を失った子どもたちの保護救済にいち早く乗り出した先達の心血を注いだ取り組みが、1947年の児童福祉法の制定に結びつき、児童養護が公的責任として位置づけられて、戦前の孤児院、育児院が養護施設として再出発した。こうした歴史的な動きを背景として、今日まで児童養護の実践が積み上げられてきている。そしてその実践はいつの時代においても、自然災害、社会的事件、経済問題を発端としての家族問題によって生起する要保護児童への対応であった。
終戦直後の混乱期時代、高度経済成長時代、高度経済成長終焉時代、低成長時代、バブル時代、バブル崩壊時代と数多くの社会・経済問題等によって家庭の養育機能の変化が顕著になり、多くの養育困難児童が社会的養護に委ねられてきた。その背景には核家族化・両親の就労・家庭の孤立化・ひとり親家庭など、家族の多様化が家庭養育機能の脆弱化となって社会的養護の充実に期待が寄せられてきた。そのような中で、児童養護施設等は家庭における児童養育の代替的、補完的、支援的、啓発・啓蒙的機能等をニーズに応じて数多くメニューとして用意してきた。
しかし、今日の被虐待児童等の増加という危機的状況により、社会的養護のあり方の抜本的見直しが求められてきた。これらの状況を踏まえ、児童養護施設等において生活をしている児童とその家族の養育上の問題や、被虐待児童の心のケアやADHDなどの発達障害を抱えた子ども自身の課題をどのように支援していくかについて、施設養護のあり方も根本的に精査する必要があると認識している。
ここでかつての児童福祉法制定当時の基本的枠組みから脱却し、子どもたちやその親の意見を社会的に代弁するサイドに立ちながら、児童養護実践の理論化、地域に必要とされる施設の多機能化への取り組み、さらに新しいニーズに対応した援助実践技術の開発等、実践者の専門性の発展に寄与していくことを目的として、ここに「日本児童養護実践学会」を設立するものである。
平成20年6月22日